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「維新銀行 第二部 払暁」~第2章 クーデター計画(15)
経済小説
2012年10月31日 07:00

<谷野頭取包囲網(15)>
bn_1.jpg 第五生命の山上が維新銀行をバックに保険勧誘をしているとの匿名の投書が中国財務局に届くようになったが、最初は同業の保険外務員の妬みによる投書として問題にしなかった。しかし谷本が頭取になった頃から山上と維新銀行との癒着を示す匿名の投書が目につくようになり、財務局内でも話題として取り上げられるようになった。
 山上と維新銀行にまつわる投書は年々増加し、累積すると数十通に達していた。筆跡は同じものはなく、また投函場所も西部県内の一定の地域からではなく分散していたことから、同一人物による嫌がらせとは思えなかった。
 投書には第五生命の山上が維新銀行の支援を受けて、強引に保険勧誘をしている内容がこと細かに書かれていた。
 「ある会社の社長とやっと保険契約を結ぶ段になって、第五生命の山上が維新銀行の支店長を同伴し、強引に契約をひっくり返された」
 とか、
 「自分の保険契約先に、維新銀行の支店長が今後の融資に影響が出るかもしれないと迫ったため、驚いた社長が契約解除を申し込んできた」
 などが書かれており、どの投書も、「維新銀行が優越的な立場を利用して、組織的に特定の保険外務員に肩を持つことの是非を問う」内容であった。
 財務局内では、保険契約の獲得については代理店同士が競争する「勝ち負けの世界」であるとの考えから問題にはしなかったが、ただそのなかで「今後の融資取引に影響が出る」などの言動が本当にあれば、問題であるとの認識で一致した。

 山上と競合する代理店側からの投書の通数から見て、かなり広範囲に維新銀行が山上の保険勧誘に協力していることは、明白であった。 
 一方で、維新銀行から山上の保険を勧誘された企業側からの投書はなかった。当局は、
 「維新銀行は保険を巡るトラブルが表面化すると保険業法違反となるのを恐れて、行内で処理しているのでないか」
 との分析をし、
 「もし山上の保険を巡る投書の内容が正しければ、今は相談役に退いてはいるものの、頭取であった谷本の責任は免れない」
 との結論に達した。
 西部県は徳川幕府の外様大名として辛酸を舐めた末に、薩摩と連携し明治維新を興す立役者となった。初代総理大臣の伊藤博文から佐藤栄作まで歴代総理大臣の数は7名を数え、後に安倍晋三、菅直人が総理となっており、有力な政治家を輩出する土地柄であった。その歴史ある西部県の県金庫を預かる維新銀行の頭取であった谷本は、西部県の政財界をがっちり固め突き入る隙を見せなかった。
 しかし中国財務局にとって今回の不祥事件は、違法な山上の保険勧誘を野放しにした谷本の責任を問う絶好の機会であった。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。

▼関連リンク
・「維新銀行 第二部 払暁」~第1章 谷野頭取交代劇への序曲(1)


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